第12回「キハ82系やいかに」

さきの「JAM2011」のわれわれのブースでお披露目した通り、キハ82系の塗装済完成品の試作ができ上がってきた。正直、大野とふたりで部品ひとつずつをつくり上げていく(といっても実際に手を動かすのは 大野ひとりだが)いままでのTT9製品と違って、いきなり完成したものが箱から出てくる今回のキハ82系とは大いにわれわれの感じ方も違ってくる。ことの仔細は月刊「鉄道模型趣味」誌821号(TMS2011年4月号)でイノウエが書かせてもらっているが、ついに国内での完成モデルは不可能と諦めて、韓国で生産を依頼したものだ。

それにしても美しく仕上げられた塗装、これでもかといわんばかりに手を掛けられた超細密なディテール。こんな製品が欲しい、と自分自身が思っていたようなキハ82系を手にして、大きなため息をついたものだ。いや、もちろん基本的には嬉しいことなのだが、やはり、塗装ひとつみても、もはやわが国では真鍮製完成モデルは、とくにわれわれのような新参メーカーではつくり得ないのだなあ、という現実を突きつけられた思いが片方にあったからである。開催前日、成田から直行でJAM会場まで届けられた試作見本は、自分たちの製品見本というより、なんだかお気に入りを買ってしまった、といった感じでもあった。いくつかの要修正点はあったものの、でき上がってふたたび届けられるのが待ち遠しい。

さてそこでだ、これはわれわれにとってひとつの大きな試金石になる。もとよりTT9の主宰者というより、単なる趣味者というに近いイノウエのことである。大野の作品づくりに加担するならいざ知らず、単 に資本を積んで製品をつくってもらうという作業にあまり興味を持っていない。ましてや、そんな大金持ちではないし、打ち出の小槌を持っているわけでもない。支持して下さる熱心な方々とともに、TT9の魅力を広めていく、車種を増やすことをしていきたい希望はあるのだが果たして。もちろん趣味のTT9だから、広く一般にまで広めることはないのだけれど、いまの現状では製品づくりにも足りない数なのだ。平たくいえば、価格も抑えて試してみたキハ82系。これが売れて初めて次のアイテムが実現できる、というものである。
是非ともご支援を。
いのうえ コラム