いのうえ コラム
第13回 「キハ82系、始末記」

 いやはや混乱のうちに、キハ82系が発売になって、そしてありがたいことに「残僅少」という状態になっている。倶楽部の方々はじめ、口コミ効果を含めて大いに感謝しなくてはなるまい。
2011年も暮も暮、あと数日で年も変わろうかというときに、どどっと大きな箱包みが届いた。彼の国とわが国とでは正月の捉え方が大いにちがうのだろうか、仕事納めして、大掃除、新年の支度に大わらわというよりもよってこの時機に、半年以上遅れて完成した製品を寄越さなくても。混乱と表現する筆頭の理由は到着時のことである。それまでにも、今月末までには……となんどか「狼が来るぞぉ〜」というような報せを受けて、そのたびにあたふたしていたものだから、こんども来るかどうか確信のない中、来てしまったのである。
それも箱詰めはちゃんとしてなかったり、いろいろあって、それを直しつつご予約いただいた方にはいち早く連絡さし上げ、模型店さんにリリースもしなければ。おかげさまで、正月に予定していたいくつかの楽しみを反古にしつつ、ようやくお届けできた次第だ。しかし、初めての完成品、初めての海外依頼、初めての編成もの……いろいろな意味でわれわれも勉強させられた。たとえば編成。少しでも価格を抑えるために5両編成で、清水の飛び降り気分で特別価格を打ち出したつもりが、ふたを開けてみれば6両編成をお望みの方が多く、7両編成はないのか、などといわれる始末。なかなかつくり手の思いは届きにくいもので。
メカニズム的に、いくつか思い通りにならなかった部分もある。その辺りは別の機会に譲るが、とにかくここまで手の込んだディテールを綺麗に完成させ、しかもこの価格で提供できたのは空前絶後。われわれにとっても、メーカーさんにとっても初めての経験だったから、という部分が少なくない。何年か経ったときに、あ〜、キハ82系は初めてだったから実現できたんだなあ、振り返るのではないだろうか。そんな予感がする。ま、けだし「傑作」といっていい製品。イノウエも欲しかった車輛が「TT9」で実現できたことで、大いに嬉しくなっている。次回のキハ81系にもぜひご期待いただきたい。