第14回 なにを求めて英国まで
これがHPに掲載される頃、おそらくイノウエは英国にいる予定だ。英 国に残るいくつかの蒸気機関車を訪ねて歩き回っているはずなのだが、それにしても英国というところは趣味のお手本の国というだけあって……ここまで書いて、時間切れで英国に旅立って、戻ってからはその旅を捻出した時間分の仕事がわーっと押し寄せて、いつの間にやらいまになってしまった。英国にいったのは、確か昨秋のことだから、我ながらあきれてしまう。諸賢には申し訳ない限りだ。
そう、英国ではいくつもの大きな刺激を得て帰ってきた。その最たるものは元気に働く蒸気機関車とその保守というか鉄道運営までもヴォランティア、つまりは趣味としてこなしてしまうという彼らの生き方、であった。折しも、tt−9プロジェクトの相棒であるオオノはいったものだ。「もう鉄道模型メーカー、それも好きな車輛だけをつくっていこうなんていう、商売よりも趣味性を優先したわれわれのようなメーカーは儲かるはずがない。いっそのこと、趣味としてブランドを守っていきましょう」出発前にされた宣言は、英国旅行中、ずーっと胸に刺さったままであった。そんな状態で巡った英国だったから、よけい
彼の国の趣味人たちの熱心さが滲みたのであろうか。イノウエはなんども同じところを旅する。そうすることで、より深く理解するとともに、変わるものと変わらないものとのちがいを観察する。
今回、蒸気機関車の保存鉄道が線路を延ばしていた。2012年に軽便の蒸機鉄道が新線開通を果たしているなんて、ちょっと信じがたいことであったが、それによって新しく魅力的なシーンがいくつも誕生していた。訪問客も少なくない。そこで働く機関助士に文字通りの女子が加わったりしていた。新しくできた駅の構内には小さな模型売り場もあったりして、そこで探し求めていた「009用連結器」を手に入れるなど、思わぬ儲けものもあった。いいなあ、趣味は気持ちを豊かにしてくれる。
で、帰国した時には吹っ切れた面持ちであった、という訳である。いや、物理的には写真をしこたま撮って、前回取り逃がしたポイントを押さえ、行けなかった鉄道をも訪問して満足して帰ってきたのだが、それ以上に気持ちの満足度の大きいこと。ふふふ、こののちのtt-9にご期待あれ。
いのうえ コラム