いのうえ コラム
第17回 新しい製品をつくりたい話

 実は……数年前にTT9の相方であるオオノと話合って決めたことがある。これからは、売れそうか売れそうでないか、という基準ではなくて、それが欲しいか欲しくないかという基準で「製品」をつくっていこうではないか、と。基本的にいくつかの条件はある。とりあえず、最初の製品であるC62重連に関連して広げていったことから、その周辺がいいなあ、と。
まあ、基本的に蒸気機関車が好きなのだから、パンタものはゆくゆくでいいことにしよう。イノウエ以上に軽便ものの好きなオオノは、いきなり「TT9」ナロウで6.5mmゲージのコッペルをつくろうなどと、嬉しい提案をくれたりしたのだが、まあ、それは一気に別世界にいき過ぎというコトで、いまは温めてあるところだ(笑)
 しかし、有り体をいってしまうならば、もはや真鍮でつくるキット製品など、珊瑚模型店の専売のようになってしまっている。真鍮製のキットを組む楽しみというもの自体がホンの一部のヒトのものになりつつある時代に、真鍮製のキット製品をつくる意義をどこに見出せばいいのだろう。それはつねづね考えさせられることである。
 そうはいっても、真鍮キットを組み立てたい。完成した姿を思い描きながらひとつひとつ部品を付けていく。形が整ったときの充足感はそれに勝るものがない。1両完成したら、それをなんとか編成にしてみたくなる。趣味のエネルギイというものは、黙っていても沸々と湧いてくる類のものなのである。いや、沸々と湧かせてこそ、趣味人というものではないか。だからこそ、欲しいものをつくっていこうではないか、という結論になったというわけで、製品化予定ラインアップはもう早くつくって欲しいものでいっぱいである。ぜひお楽しみに、というより、
諸賢の「つくらせたいもの」もお訊きしたくなったりしている。