いのうえ コラム
第19回 そろそろなにか新製品が欲しい

いや、他人事のように訊こえるかもしれないが、「TT9」の新製品が欲しい。狭軌間を持った「いい大きさ」の車両が欲しい、それを走らせたい。そうした理念のもと、最初の製品であるC62型を送り出してから早や15年。定寸ヴェニアの上に敷かれた複線エンドレスをC62+C61重連の牽く客車列車とキハ81、82系混成の8両編成とが行き交う。ずっと置きっぱなしで、気が向いたとき、それこそ出掛ける前にでも気が向いたらスウィッチを入れてひと走りさせる。ある時はやる気が湧いたり、ある時は気分が収まったり、まさしく一服の清涼剤。真鍮色の客車列車とみごとな塗装仕上げで室内まで覗けるディーゼル特急と、気分に応じてどちらか、時には両方を走らせている。少しシーナリイをつけたらもっといいだろうになあ。ヤードの線数を増やしてもっといろいろな列車を留置したらいいだろうなあ。そうは思うのだけれど、カトーの線路そのままの「お座敷運転」ならぬ「ヴェニア上運転」状態がつづいている。いや、車両がないわけではないのだ。9600型はいくつかのタイプが完成しているし、天賞堂のD51だってあるにはある。でも、新しい列車を仕立てるほどに刺激的でないのも事実。というより、次なる製品が待ち遠しくて気がそちらに向かないのだ。いま、懸案のC56がとりあえずテンダーの見本を見せてもらってから、もう数ヶ月経過。その間にも、客車のいくつかが試作までいったのに、プレス段階でNGが出されたまま。いくつも欲しいものリストは増えつづけ、にっちもいかなくなっている。それもこれも、オオノの手が動いてくれないから……とヒトのせいにするのは簡単なのだが、なにが停滞している原因なのかはイノウエ自身いま一度チェックしてみなくてはなるまい。世の中、3Dをはじめとして、技術の進化は著しい。そんなのを利用すればもっと製品化も早くなるだろうに。そういう声を聞きつつも伝統的な真鍮製鉄道模型のスタイルを守っていきたい。ううむ。抜け出す道はどこに。
 追:先輩N氏から久々の電話。「おい、『国鉄蒸気機関車全史』で間違いを発見したぞ」わー、その通り、なにを勘違いしたか C10型の動輪径をφ1600と書いている。正しくはφ1520。済まぬスマヌ、よろしくご訂正を。