第6回 1台の小さなクルマ

まったく今日も今日、1台のクルマをプレゼントされた。鉄道模型好きのどれほどがミニチュアカーに興味を持っておられるか解らぬが、イノウエは「仕事はクルマ、趣味が鉄道」などと標榜してきた、一応は自動車ものかきである。クルマも好きで早くから「クルマ趣味」を実践することをものかきのテーマにしてきた。
昨今のように猫も杓子もなんとかのひとつ覚えのように「エコ、ECO、えこ」とかまびすしい世の中にあっても、休日ともなるとしっかり旧いスポーツカーで走っている同好の士は少なくないのだ。趣味というからには、実際に趣味のクルマと暮らすだけでなく、カタログを集めたり、ミニチュアをつくったりコレクションしたり、果ては鉄道のレイアウトならぬガレージ趣味にまで走ってしまったりする。

で、プレゼントされたのはディーノ246GTの1/43モデル。青山の有名なショップ「メイクアップ」が「アイドロン」というブランドで発売しているものだ(お礼のつもりで紹介させていただくと、完成品¥24000。秀逸なコレクターズ・アイテムだ)。クルマというもの、ほとんどが曲面でできあがっているから、真鍮、プレス加工中心のTT9モデルなどとはちがって、ダイキャストなどの鋳造がメインだ。そうそう、昔もりこーさん(ご存知「モデルワーゲン」主宰)と組んで、ロストワックスでミニチュアカーがつくれないかとトライしたことがある。時代の進歩はすごいもので、新作のディーノは、鈑金工作ではないの? と思わせるようなシャープな仕上がり。1x2mmほどのスリットもしっかり抜けている。

ま、そんな出来もさることながら、嬉しかったのは、イノウエの所有車そのものを模型にアレインジしてくれていたこと。そう、特定ナンバー機をつくって下さったのだ。クルマは機関車とちがって、個人で所有することができる。だから、このディーノのように35年以上経ったクルマでもしっかり個人で保存していたりできるのだ。蒸気機関車がいくら好きでも自宅に所有することはままならない。できたとしても走らなくては詰まらない。その点、ナンバーもあって自由に走れるクルマ。だから趣味性が薄い、という意見もあるが、どっぷり浸ればどちらも奥の深い趣味・・詰まるところ、趣味とは個人の意志が大きく作用するもののようだ。
いのうえ コラム